中学国語の名作を読む 走れメロス<読編>17

高校入試、中学校での日々の学習など、国語が苦手な人のために、「これだけは」という問題を紹介。受験対策や定期試験対策に活用して下さい。

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さぁ、今回もぼちぼち読んでいきましょう。中学生向けに書いているこのシリーズですが、実は社会人の方にもよく読まれていたり。まぁ、だからといって方針が変わることはありませんが。いつも通りのスタンスで書いていきますのでご安心を(笑)

それでは、前回までの疑問の積み残しを確認しておきましょう。

王が、人を信じられなくなったきっかけは何なのか
メロスは、セリヌンティウスのために約束の刻限までに戻ってこれるのか
メロスは、寝ころんだところからどうやって復帰するのか


それでは、本文にまいりましょう。前回では、メロスはやる気をなくしてしまったんでしたよね。いつも通り、積極的に、疑問をもって、二度ほど音読してください。

私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。動けなくなるまで走って来たのだ。私は不信の徒では無い。ああ、できる事なら私の胸を截《た》ち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。私は、よくよく不幸な男だ。私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。私は友を欺《あざむ》いた。中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運命なのかも知れない。セリヌンティウスよ、ゆるしてくれ。君は、いつでも私を信じた。私も君を、欺かなかった。私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった。いまだって、君は私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。ありがとう、セリヌンティウス。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。セリヌンティウス、私は走ったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ! 私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。山賊の囲みからも、するりと抜けて一気に峠を駈け降りて来たのだ。私だから、出来たのだよ。ああ、この上、私に望み給うな。放って置いてくれ。どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。だらしが無い。笑ってくれ。王は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した。私は王の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は王の言うままになっている。私は、おくれて行くだろう。王は、ひとり合点して私を笑い、そうして事も無く私を放免するだろう。そうなったら、私は、死ぬよりつらい。私は、永遠に裏切者だ。地上で最も、不名誉の人種だ。

(太宰治『走れメロス』より)

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私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、みじんも無かった。神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。動けなくなるまで走って来たのだ

また「のだ」が出てきましたね。そのはたらきを覚えているでしょうか?

のだ=前の文を説明するはたらき(理由/まとめ など)

「のだ」を連発して、やる気がなくなってしまったことの理由を説明していますね。このあたりも文章作成のうまさが光りますね。

私は不信の徒では無い。ああ、できる事なら私の胸を截《た》ち割って、真紅の心臓をお目に掛けたい。愛と信実の血液だけで動いているこの心臓を見せてやりたい。けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。

長く書いていますが、結局のところはどうなのでしょうか? そのポイントに関しては色を分けています。文法的に考えますと、

「けれども(逆接)」のはたらき
1)予想とは反対のことを説明する目印

 例)がんばって勉強した。けれども、テストの点数は良くなかった。
2)「けれども」の前と後ろでは、後ろのほうが重要
 ※上の例)では、「テストの点数は良くなかった」という部分のほうが重要で、筆者が言いたいことをあらわしています。

…ということで、「けれども」に注目しながら、さらにポイントとなるべき「主語と述語」を抜き出したのが、上の青字の部分というわけです。要するに何が言いたいのか? となると、

私は ー 精も根も尽きたのだ。

ってことですね。

私は、よくよく不幸な男だ。私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。私は友を欺《あざむ》いた。中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定った運命なのかも知れない。

マイナスイメージのことばが続いていますね。しかも「不幸」というのは、自分でどうにかできるものではありません。「運命」ということばまで持ち出しています。

だんだんと自分を正当化していっているような気も。二度寝するときに思うことなんていうのはこんな感じでしょうか。

でも、考えてみて下さい。前回に考えた疑問。

メロスは、寝ころんだところからどうやって復帰するのか

復帰しなければ、物語としてこのまま終わってしまいますね。復帰しないような物語もあるかもしれませんが、こうした予想は常に持っておいた方が良いです。そうすることで「速く」読むことも出来ます。

セリヌンティウスよ、ゆるしてくれ。君は、いつでも私を信じた。私も君を、欺かなかった。私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった。いまだって、君は私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。ありがとう、セリヌンティウス。よくも私を信じてくれた。それを思えば、たまらない。友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。

運命だから、しょうがない…とあきらめるのは簡単ですが、それで殺されてしまうセリヌンティウスの気持ちは…? というのがよぎったのでしょうね。

この辺りの心情なんかは、『カイジ』(福本信行著)なんかでうまく描かれていますね。

セリヌンティウス、私は走ったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。信じてくれ! 私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。山賊の囲みからも、するりと抜けて一気に峠を駈け降りて来たのだ。私だから、出来たのだよ

さきほどと同じく、「のだ」を連発して、今まで自分ががんばったことを「説明」しています。

ああ、この上、私に望み給うな。放って置いてくれ。どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。だらしが無い。笑ってくれ。王は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した。私は王の卑劣を憎んだ。けれども、今になってみると、私は王の言うままになっている。私は、おくれて行くだろう。王は、ひとり合点して私を笑い、そうして事も無く私を放免するだろう。そうなったら、私は、死ぬよりつらい。私は、永遠に裏切者だ。地上で最も、不名誉の人種だ。


ここでも、先ほどと同じく「けれども」が重要なキーとなっています。

私はがんばった。
けれども、
私は王の言うままになっている。

という構成ですね。


…それにしても、自分をどれだけ責めようとも、結局のところは遅れていくことはセリヌンティウスを殺してしまうことでしょう。『カイジ』の限定ジャンケンの終盤でしたでしょうか。同じように描かれていますね。

さて、それでは、今までの疑問を確認しておきましょう。

王が、人を信じられなくなったきっかけは何なのか
メロスは、セリヌンティウスのために約束の刻限までに戻ってこれるのか
メロスは、寝ころんだところからどうやって復帰するのか


三番目の疑問は、今回で解決しそうでしたが。
次、もしくはその次で解決するでしょうかね。
最後に、二度ほど音読して復習をしておいてください。


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2012.06.30 21:05 | [中学国語の名作を読む]走れメロス<読編> | トラックバック(-) | コメント(0) |
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