中学国語の名作を読む 走れメロス<読編>18

高校入試、中学校での日々の学習など、国語が苦手な人のために、「これだけは」という問題を紹介。受験対策や定期試験対策に活用して下さい。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- --:-- | スポンサー広告 | トラックバック(-) | コメント(-) |
さぁさぁ、本当に長くなっています、このシリーズ。中学古典を全訳してみるー平家物語ーを抜くのかどうか…。飛ばせるところは飛ばしていきたいのですが。

まぁボチボチ、ぼちぼちいきましょう。それでは、前回までの積み残しの疑問をば。

王が、人を信じられなくなったきっかけは何なのか
メロスは、セリヌンティウスのために約束の刻限までに戻ってこれるのか
メロスは、寝ころんだところからどうやって復帰するのか


このうち、三番目の疑問はそろそろ解消してほしいところですよね。どうも愚痴と言い訳ばかり続いています。そうです。前回では、メロスが「もうダメだ」と思って、それを正当化し始めましたね(笑)。それでは、本文にまいりましょう。

セリヌンティウスよ、私も死ぬぞ。君と一緒に死なせてくれ。君だけは私を信じてくれるにちがい無い。いや、それも私の、ひとりよがりか? ああ、もういっそ、悪徳者として生き伸びてやろうか。村には私の家が在る。羊も居る。妹夫婦は、まさか私を村から追い出すような事はしないだろう。正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉《かな》。——四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。
 ふと耳に、潺々《せんせん》、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から滾々《こんこん》と、何か小さく囁《ささや》きながら清水が湧き出ているのである。その泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。水を両手で掬《すく》って、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。行こう。肉体の疲労|恢復《かいふく》と共に、わずかながら希望が生れた。義務遂行の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である。斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! メロス。

(太宰治『走れメロス』より)

↓↓↓ 解説を読む前に、クリックして応援お願いします!
にほんブログ村 受験ブログへ
にほんブログ村

セリヌンティウスよ、私も死ぬぞ。君と一緒に死なせてくれ。君だけは私を信じてくれるにちがい無い。

前回からの自己正当化が続いています。

オレだって本当はこんなことはしたくないんだ…

と言いながらラクをする人…いますよね? 様々な物語で描かれています。切り捨てる側は心が痛む程度でしょうが、切り捨てられる側はたまったものではありません。ベルセルクでいうと、切り捨てる側がグリフィスで、切り捨てられる側がガッツたちといったところでしょうか。まぁ、あの話はそこに至る過程が周到なんですが。現実の世界にも…。

かなり脱線してしまいました。続きにまいりましょう。

いや、それも私の、ひとりよがりか? ああ、もういっそ、悪徳者として生き伸びてやろうか。村には私の家が在る。羊も居る。妹夫婦は、まさか私を村から追い出すような事はしないだろう。正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。人を殺して自分が生きる。それが人間世界の定法ではなかったか。ああ、何もかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉《かな》。

自分でも「自己正当化」が過ぎると思ったのでしょうね。

普通はそうした「自己正当化」に自覚的にならないものですが、メロスはとうとう開き直りました。だからこそ、続きがあるのです。

——四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。

で、結局寝てしまいました。
なにかといえばメロスは寝ているという印象が強いです。

 ふと耳に、潺々《せんせん》、水の流れる音が聞えた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。すぐ足もとで、水が流れているらしい。

このあたり、水をうまく使っているなと思うのはボクだけでしょうか。

メロスを村に閉じこめていたのは大雨でした。河を自力で泳がせて体力を奪ったのも大雨でした。

それに対して、まどろんでしまったメロスを目覚めさせたのも水です。

よろよろ起き上って、見ると、岩の裂目から滾々《こんこん》と、何か小さく囁《ささや》きながら清水が湧き出ているのである。その泉に吸い込まれるようにメロスは身をかがめた。水を両手で掬《すく》って、一くち飲んだ。ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。

赤字の部分がプラスイメージのことばです。清水をきっかけに、メロスが復帰しそうです。

歩ける。行こう。肉体の疲労恢復《かいふく》と共に、わずかながら希望が生れた。義務遂行の希望である。わが身を殺して、名誉を守る希望である。斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ間がある。私を、待っている人があるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! メロス。


プラスイメージのことばがたたみかけられています。ここで、疑問が解決しましたね。

メロスは、寝ころんだところからどうやって復帰するのか?
⇒清水をきっかけに、信頼に報いようとだけ思って復帰した。


落ちるところはとことん落ちて、
ふとした、本当にさりげないきっかけで復活するところはとことん復活する。
そして、出てきたことばがタイトルの「走れメロス」。

もうこのあとの結果はわかりますよね。

ハリウッド映画なんかだと、主人公を最大のピンチに陥れたものが、解決の糸口となる…っていうことがありますね。このあたりが見事な作品もあります。たしか、ダイハードなんかはそうした造りになっていたような…(すいません、記憶はアヤフヤです)。

走れメロスでは、そうした役割を担っているのが「水」かなとボクは思います。

…ということで、今までの疑問を確認しておきましょう。

王が、人を信じられなくなったきっかけは何なのか
メロスは、セリヌンティウスのために約束の刻限までに戻ってこれるのか



名優による『走れメロス』の朗読を聴きたければ⇒こちらへどうぞ。
2012.07.01 07:48 | [中学国語の名作を読む]走れメロス<読編> | トラックバック(-) | コメント(0) |
トップページスポンサー広告||[中学国語の名作を読む]走れメロス<読編>中学国語の名作を読む 走れメロス<読編>18












管理者にだけ表示

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。